老後の生活費はJRAからもらおう●まえがき

「若い時分から私は、過度の飲食を自制するとともに健康維持に気を配って適度の運動を続けて参りました。現在これといった持病もなく不安のない日常を送っていられるのは、こうした自己抑制の結果なのだと考えています」
 就任前から山積している懸案のなかのひとつ、保険料改定問題に関し、新総理はこのように発言なさいましたとなれば、それについて異議や批判の余地はなかった。まったくもって仰せのとおりだったからである。
 だが無学というのは困ったものだ。まったく同じ話なのに、彼はマイクに向けてこういい放ったのだ。
「好き放題に飲み食いの挙げ句、入院騒ぎという人の保険料まで、何で俺が払わされなくちゃならないの?」
 今や暗愚の標本みたいないわれ方の前自由民主党総裁氏の発言である。その後も舌禍事件の乱発だったから正確には思い出せないが、庶民感情を逆撫でする無神経な物言いと、早速火に油の袋叩きで、前総裁氏はこの回も被安打6で失点も7の大乱調。しかしベンチには控え投手もおらず、とうとう自民党ジャイアンツは300点取られるコールド負けを喫してしまった。
 だがいい方ひとつで彼の天文学的防御率は大幅に改善できたのではあるまいか。
 ボディガードを従えて公邸の周辺で毎朝ジョギングしていた彼のランニングフォームは、到底70代の老人のそれではない。素晴らしいのだ。還暦近くなってにわかに牛のような体型の古女房とヨロヨロウォーキングという人々は、総理大臣殿が見れば人ではない。イソップ物語に登場し、秋になって蟻さんに泣きついているキリギリスなのだ。
 お説教大好きという日本人にとって、あの寓話集の教訓は聖書なんぞの100倍説得力を持っている。
 自身の軽快なジョギング風景をビデオで流しながら自己抑制の話でもすれば、集まってフルタチ君やみのもんたとブーイングを繰り返したデブキリギリス軍団は、全員グウの音もなかったことだろう。
 生まれついてのキリギリス派の私としては、今さら蟻さんマークの引越社というわけにもいかないので、審判の日までのこれからを俎上の鯉で過ごすしかないが、保険料なんぞチッとばかりおまけしてもらったところで、キリギリス、いや人間は年を取ったら負けなのだ。小汚い年寄りになってしまったら、夜を徹して宝クジ売り場に行列なんて浅ましい真似はやめて、1人静かに暮らすがいい。
 チョイチョイ私のゴルフについてくるストーカーまがいの婆さんは、聞けば健康麻雀が楽しみだという。
 麻雀なんてそもそもが不健康の極みと思うのに、それが健康を名乗るのはどういう冗談なのかと問えば、年寄り同士で集まって金も賭けずに日がな1日麻雀を打つのだそうだ。
 ボケの防止にとてもいいと語る彼女は、もうたぶん相当呆けているのだろう。あと何回できるかもわからないゴルフの貴重な1回を、俺はこんな呆け婆さんに使ってしまったと、ガックリしながら打つパットが入るはずはないのだ。
 負けて金も取られないなら、その麻雀は4人が一度に別々の歌を歌い出すカラオケと同じ、ただ騒々しいだけだろう。それが健康というなら私は是非とも早世させていただきたい。
 私の読者は、おそらく私を最高齢とするオッサン、おじさんが中心で、30代後半から40代前半世代が次のグループ、つまりひょうたん型で構成されている。
 だから私の願いはその形状が円柱化するような主張を上梓することだったが、無学は前総裁殿と同じで、だから円柱化は叶わなかった。
 しかし反面それはいいことなのかもしれない。ひょうたんからは駒が出ると昔の人もいっているのだから。
 性質の悪い小役人どもに仕上げられてしまった年金なんて、もう小沢君に頼んだって返ってはこない。大丈夫、取り返してあげると鳩が啼いているけれど、それは屋根に登って星を掃くような話、できない相談なのだ。
 だからこれからは、あなたがキリギリスであれ蟻であれ、1人で闘う気構えをもってくれ。その覚悟で番組表のページを開けば、そこからはきっと驚くような駒たちが飛び出してくるだろう。
 もう残り時間は少ないが、そういう浄土への道案内に本書の紹介するアプローチを使ってもらえたら、私の物言いも甲斐があったというものだ。09年夏、それはパート1国競馬旅立ちの朝だった。番組表の作り手たちは暗愚から一番遠い場所に構えて、第一歩を慎重に踏み出した。一歩目をどう踏み出したのかを知らないで、二歩目の方向を決めることはできないのだ。ぜひ本書をとおして彼らJRAの目指す方向を見守ってほしいと願う。


目 次

老後の生活費はJRAからもらおう●まえがき

LESSON1 番組表的馬券の当て方儲け方
 札幌競馬開催の函館記念を勝ったサクラオリオンの立場
 番組表研究25年の成果
 「例外的措置」を見逃してはいけない
 矛盾は見逃してはいけない
 「このレースは正規戦でありません」宣言
 シナリオの思想を読む
 空白の6日間なのか
 パンデミックの総仕上げ
 隠れ初日シリーズ
 ハンデ戦は定量戦を敗れてしまった馬の復活の場
 主催者が考えていることは「勤勉に働け」だ!
 レース名大量移設の不思議
 誰も気にしないところに目を向けよう
 不都合はないが不可解
 ゲームの基盤を今年作っていた
 なるほど! こうすれば馬券は当たるのだ
 つまり、名前は違うけど同じ馬なのだ
 こんなに簡単に勝ち馬がわかるのは番組表理論だけ

LESSON2 初公開! 予想のプロセス
 展開論をぶっているあんた! 馬券は当たってるかい?
 「バカヤロー」なのは騎手じゃない
 ともかく生半可な知識を捨てろ!
 予想はズバリ! でも出走取消があったら……
 消耗戦はお荷物
 Jpnの役割
 オペレーションの緊急避難
 A枠、B枠、囮枠の見極め
 種明かし……
 「三場戦」化
 3日間開催のスリル

LESSON3 2009年秋&2010年へのメッセージ
 2009年の安田記念を凝視せよ
 ウオッカのお仕事
 あなたの競馬も「そんなのカンケーねぇ」
 秋のG1へのメッセージ
 JRAの伝言は正確にバトンされる
 JRA競馬のキャリアというもの
 ゲームのオペレーションは立法体
 すべてのゾロ目は2着枠で発生する
 「勝つ」のではなく「役割」が与えられるからだ
 フェブラリーS→天皇賞春
 祝日競馬は特別?
 戦歴を受け継ぐ
 スプリンターズSはタブー馬が主役

LESSON4 設計図の読み方
 取消や除外も予想できる
 2歳戦の設計図
 新潟2歳Sの勝ち馬に求められるもの
 奇妙な果実

LESSON5 2009〜10年のG1を占う
 08年ジャパンカップの伝言
 枠で考えるということ
 今年の安田記念、宝塚記念、そして……
 不親切だが確実にメッセージは送られている









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