「自然は数学で書かれた偉大な書物である」
 といったのは、かの有名なイタリアの物理学者にして、天文学者のガリレオ・ガリレイである。
 以来、自然界の複雑な現象を単純な公式で表現することに、多くの数学者、物理学者が取り組んできたわけだが、1970年代に入って、海外線の形、山の形、樹木など自然の姿を数学で描写するフラクタル理論が、フランスの物理学者、ブノワ・マンデルブロ博士によって提唱される。
 フラクタル理論は、数学以外の自然現象の解明、信号処理などの工学分野のみならず、医学分野、経済分野においても広く注目されている。株式情報誌の記者として、足を棒のようにして、兜町(シマ)界隈を取材していた1990年代前半に一度、「フラクタル理論」の本を読んだことがある。難解極まりない内容に、途中でページをめくる手がとまってしまい、結局、「フラクタル」という言葉を記憶にとどめるだけに過ぎなかった。
 10年後、フラクタル理論と再会することになる。『フラクタル時系列の予測手法を用いた株価予測とその応用』(九州大学/池田欣一・時永祥三)というレポートは、文系出身の筆者の脳みそでは、簡単には理解しがたい内容ではあったが、株式情報誌記者から株式戦術研究家へと転身を図り、株式投資の世界に関わる以上は、避けては通ることはできないと腹を括って、何度も何度も繰り返して読んだ。
 結局、フラクタルによる株価予測手法は、読み噛った内容ながら、月足チャートと日足チャートの相似性に着目したトレード手法を確立。アノマリー投資術と併用して、大いに役立てている。
 フラクタル理論との出会いについての話は、これくらいにして、さて、本題に入ろう。時系列や図形などの一部分を拡大もしくは縮小した場合に、同じような形状をもつ相似形が出現する性質を解明するフラクタル理論を競馬の出馬表で試してみたことが、本書を出版するきっかけとなった。
 1日の競馬を一本の樹木と考え、馬券売上高が最も多いメインR(レース)を幹、馬券売上高が最も少ない第1Rを枝と位置づける。出馬表を並べ、幹と枝で相似になっている部分を探し、単純な模様、図形と捉えて、馬券予想に活かすというものである。
 簡単にするために、本書では、第1RとメインRの出馬表比較に限定して、話を進めていくことにする。この本を手にした人にとって、関心があるのは、朝一番の第1RとメインRの出馬表を比較検討するするだけで、メインRの馬券が簡単に的中するか否かという点であろう。
 結論から申し上げると、本書において相似性と表現しているジョッキーの騎乗ゲートの一致、上位1~3人気のゲートもしくは枠の一致など、第1RとメインRの出馬表に共通点を見つけ、第1Rの結果をベースに、メインRにおいても第1R同様の結果を追求するだけで、驚くほど連軸指名率がアップし、その産物として、的中率、資金回収率が劇的に改善することをお約束しよう。
 第1RとメインRの出馬表の共通点……そう表現すると、「競馬主催者が特定の人に勝ち馬を教えている」とするサイン読みや暗号読みの類いと勘違いする人もいるかもしれないが、フラクタル競馬理論は、時系列や図形などの一部分を拡大もしくは縮小した場合に、同じような形状をもつ相似形が出現する性質を解明するフラクタル理論をベースに、競馬の出馬表を図形として捉え、1日で最も馬券売上高が少ない第1Rと、1日でもっとも馬券売上高が多いメインRの図形(出馬表)の相似性をジョッキーの騎乗ゲートの一致、上位1~3人気のゲートもしくは枠の一致などに求め、馬券予想に活かすというものである。フラクタル競馬理論は、サイン読み、暗号読みとは、全く次元が異なる考え方であることを断っておきたい。