私は、福祉施設で栄養管理の仕事をしていますが、それとは別にブログやツイッターなどのネットメディアで「食と健康」に関する情報発信をしています。

 情報発信を始めたきっかけは、子どもの保育園入園でした。
 私には男の子が二人いますが、長男は発達に少し気になるところがあり、屋外での活動が多くて本人が楽しく過ごせそうな保育園に入れました。その保育園は、とてもよい園でしたが、いわゆる「ニセ科学」や「トンデモ」だらけ。石油製品である紙おむつは子どもの肌に悪い、母乳で育てないとキレやすくなる、牛乳を飲むとアレルギーになる、ワクチンを打つよりも病気に感染したほうがいい、膿はデトックスだから薬をつけて治す必要はないなど……、本当に盛りだくさん。
 私自身は栄養学を学んでいたこともあって、これらすべてがまったく根拠のない間違った情報であると気づくことができましたが、中には真剣に取り組んでいらっしゃる保護者の方も見かけました。きっと、「大切な子どもにとってよいことなら、なんでもやってあげたい」という親心からだったでしょう。
 こうして子育てに関する情報にはデマが多いことに気づかされたのと同時に、それらのデマがクチコミだけでなく、インターネットや雑誌、書籍などによって広められていることを知りました。小さな子どもはよく体調を崩したり、思ったように食事をしてくれなかったりとトラブルが多いもの。そんなとき親心につけこむようなデマを目にすると、信じてしまう人もいるでしょう。だから、デマが広まってしまうのだと思います。
 しかし、子育てに関するデマは、単に役に立たなかったり、親が無意味に大変な思いをしたりするだけでなく、子どもの健康や成長を阻害することもある危険なものです。

 子育てに関するデマの中でも、私の専門分野である「食」に関するものは種類も多く、テレビの健康番組や学校で習う食育の中にも間違った情報が多く紛れ込んでいます。
 たとえば、「毎朝、ご飯を食べる子どもは、朝食を食べない子どもやパンを食べる子どもよりも健康的で成績もよいので、ご飯を食べましょう」というような食育がありますが、実際にはご飯食がパン食よりもよいという栄養学的な根拠はありません。
 「子どもには、加工食品を使わない、すべて手づくりの料理を食べさせるべき」というような食育もありますが、”手間をかければかけるほどよい””加工食品は悪いもの”という主観による決めつけが透けて見えます。手づくりすることによって栄養が格段に増すことはありませんし、加工食品に含まれている食品添加物によって子どもの健康が損なわれるというデータもありません。

 そこで、本書では子どもの食に関するよくある疑問に対して、食事摂取基準の最新版である「日本人の食事摂取基準2015」を踏まえ、栄養関係の論文や国が公表している統計などの信頼できるデータをもとに回答しました。
 また、いくら栄養学的に正しくても大変すぎて続けられなくては意味がありませんから、本当に大切な食事のポイントと、無理なく実践する方法をお伝えしようと試みました。
 仕事や家事、雑事とさまざまなことに忙しい親が、毎日のように無理をして手の込んだ料理をつくる必要はありません。おそらく子どものほうだって、親が多くの時間を黙々と調理に費やすよりも、一緒に遊んだりくつろいだりする時間をつくってくれたほうが嬉しいのではないでしょうか。そして、毎日必ずしも理想的な栄養バランスの食事をとらないといけないわけでもありません。たまには、少し逸脱したって大丈夫!

 本書を読んでいただくことで、みなさんの疑問や不安が少しでも解消されれば嬉しいなと思います。ぜひ、気軽に読んでみてくださいね。