私が本格的に競馬研究に没頭し始めた頃、仲間由紀恵さん主演の『トリック』というテレ朝のドラマをよく見ていた。ドラマは好評につき続編『トリック2』シリーズが制作され、その第1回放送の直前、彼女は番宣で「徹子の部屋」に出演し、そのなかで自分が上から女・男・男・男・女の5人兄弟の末っ子であると語った。
 黒柳さんは「今どき5人も珍しいですね」といった。このときまだ黒柳さんも多くの視聴者も、彼女の語った「女・男・男・男・女」の意味するものを理解できていない。
 が、私は彼女がいい出す次の言葉を予測できた。『私の真ん中の兄は、兄弟姉妹が一人ずつ全部揃うんです』「あら、まあ!」と黒柳さん。勿論私がこれを予測できたのは、『未来を予知するオカルト的な能力』が備わっていたからではない。たまたま私が男・女・女・女・男の5人兄弟の長男で、「兄弟は?」「男・女・女・女・男の5人です」「多いですね」「私の真ん中の妹は、兄弟姉妹が一人ずつ全部揃うんです」という会話を延々30年以上も繰り返してきたからだ。当事者にとっては『お約束』なのである。5人兄弟である確率自体が低いのだから、気付かないのは無理もない。
 もう一例、タレントの小堺一機さんが自虐ネタで「『危機一髪』を右から読むと『髪、一機、危うし』」といっていたが、「うまい!」というか、これも本人にしてみればお約束なのであろう。
 私は競馬番組表研究者の端くれで、暗号・サイン読みのみに熱心なわけではない。が、文字は重要である。数字も重要である。そして詳細は本文で後述するが、その並び方・位置関係は非常に重要なのである。
 スパイの世界では、情報のことをインテリジェンスと呼ぶようだ。かつて「外務省のラスプーチン」と呼ばれた佐藤優氏の本によると、秘密情報の98%は公開情報を再整理することによって得られるという。スポーツ新聞や雑誌などにはよく、「厩舎関係者からの極秘情報をキャッチ!」などという広告が出ている。あいにく私にはそんな非公開情報へのアクセス手段が全くない。ならば為すべきことは、誰にでも手に入る公開情報を再整理することでしかない。
 本書は『専門書』であり、かつ『学術書』である。難しいのは当たり前だ。しかしながら『入門書』でもある。したがってわかりやすく説明する努力はしたつもりなので、最後までお付き合いいただきたい。
 ずいぶんと偉そうな書き出しになってしまった。しかし、私のような残念な頭脳の持ち主でも、これから明かしていく地道な研究の積み重ねによって、驚くほどの成果を挙げてきた。縁あって今こうして本書を手にしていただいている皆様にも、是非この醍醐味を堪能していただきたい。