この本を手にとっていただいたみなさま、初めまして。。
 私は兵庫県尼崎市の社会福祉事務所で”就労促進相談員”という仕事をしている、林美佐子。
 え? それってどんなお仕事? 
 耳慣れない言葉にとまどう方もたくさんいらっしゃるでしょう。お仕事についての詳しいことはこのあと書かせていただくとして、手短かにご説明しますと、「生活保護受給者のうち、就労可能な人の就労を支援する」という専門職です。
 生活保護? あんまり関係ないかも。
 そう思う方もたくさんいらっしゃるかと思います。でも、関係ないことではありません。
近年では収入も高い有名タレントの親が生活保護を受けているという報道があったり、働いているのに生活保護受給者の受給金額よりも収入が低いワーキングプアの問題や、保護費の不正受給問題、高齢化にともなう受給者増と税負担の問題、貧困による餓死、貧困による犯罪などなど、深刻な社会問題の一テーマにもなっています。
 生活保護受給者については、ネットなどでは「セーホ」「ナマポ」などという侮蔑的な言われ方をすることもありますが、本来、生活保護とは国民の誰にでも起こりうる生活困窮の事態に際し、憲法の定める「必要最低限の生活」を維持する権利を保障するためのセーフティとして存在するものであり、決して他人事ではないのです。
 想像してみてください。
会社の倒産、不測の事故や病気などで仕事ができなくなって収入が途絶える。
 助けてくれるはずの家族や親類が疎遠もしくは存在してない。
 家族とのトラブルで家を出てしまい、すむところも確保できず、職にもつけない。  ……このようなことは、たとえ今現在、普通の生活ができていたとしても、誰にでも起こりうることです。そういう方の救済措置として、生活保護の制度は存在します。
 そして、生活保護を受けている方々の中で、仕事ができる年齢15歳から64歳までの方で障がいや病気がなく、普通に働くことができるのにさまざまな理由から就労できていない方に、求職活動のお手伝いをするのが、私たち就労促進相談員のお仕事なのです。
私は、こうしたお仕事の中で、多くの人が変わる瞬間に立ち会わせて頂きました。
暗くよどんだ目に、光が宿る瞬間。
自分の過ちに気づき、這い上がろうと握り締めた拳。
投げやりな人生を改め、前を向いて歩いていこうとする姿。
その瞬間を目撃するごとに、私は感動し、涙があふれてしまいます。
実際、「働く」ことに関して、腕力や理屈で抵抗する人たちもいました。
「働かんでももらえてんのやから、わざわざ苦労して働くなんてアホらしい」
「もらえるもんやったら、そのままもらっときたい」
そういう方々もいました。
でも、その方たちに真心をもって接していくうちに、信頼関係が生まれ、私の思いが伝わっていきました。そして前向きに生きる気持ちになり、就労に結びつくのです。
そうして生まれ変わった人たちとは、その後も交流があります。制約のある暮らしの中でも、そこには人と人のふれあいがあり、ささやかな幸せだったり希望、そして笑顔があります。
かくいう私も母子家庭。高校生の自閉所の息子と、中学生の不登校の娘がいて、市の嘱託職員で月収は手取り15万円に届きません。しかも正規雇用ではなく1年ごとの契約という不安定な立場。自分でも悲しくなってくるほどのワーキングプアなんです。でも、そんな私のところに生まれてきてくれた天使みたいな子供たちと、私が仕事を通じて出会った人たち、周囲のみんなが私を勇気づけてくれます。
私のチカラで、救える人がいる!
それによって私も救われる!
一般の方には聞き慣れない珍しいお仕事。本書では、私がその仕事を通じて感じたこと、得たものがぎっしり詰まっています。私の人生の答えがここにあります。
それがほんの少しでもみなさんに伝わり、あったかい気持ちになっていただければ幸いです。特に人生のどん底にいると思っている方には、何とかなるという気持ち、強く前向きな気持ちになっていただくことを願ってやみません。
 今、しんどいあなたも絶対に変われる。
だから、最後まで絶対にあきらめたらアカンで!!

尼崎市福祉事務所 保健第二担当課 就労促進相談員 林美佐子