第10回 妊産婦と子どもが気をつけるべき食品

Print

毎月第4木曜更新!

妊産婦と子どもが気をつけるべき食品

 先日、はちみつを離乳食としてとった乳児が「乳児ボツリヌス症」で死亡するという悲しい事故がありました。母子手帳にも「1歳未満の子ども(乳児)には与えないように」と記載されているのですが、今回の事件で初めて知った人も多いようです。こうした不幸な事故を繰り返さないためにも、はちみつに限らず、妊産婦や子どもの健康を害する恐れのある食品についてまとめてみました。

<妊産婦が気をつけたい食品>
○マグロやカジキなどの大型の魚やクジラ
大きな魚やクジラは海に住む小さな生き物や小型の魚をたくさん食べて育つため、小さな生き物に含まれている水銀が蓄積しています。水銀は細胞分裂が活発な胎児の発育に悪影響を与えやすいため、特に妊娠中はあまりたくさん食べないようにしたいものです。本マグロやメカジキであれば1週間に80g程度、ミナミマグロやマカジキであれば160g程度までが目安です。魚には妊娠中に必要な栄養素が豊富に含まれていますから、小魚と組み合わせて献立を考えるとよいでしょう。

詳しく知りたい方は厚生労働省作成のパンフレットが参考になります。

○生ハムやナチュラルチーズ、スモークサーモン
生ハムやソフトタイプのナチュラルチーズやスモークサーモン、無殺菌の牛乳などから、まれにリステリアという細菌が検出されることがあります。健康な成人では感染の危険はあまりありませんが、妊娠中は感染しやすく、胎児にも重篤な症状がでることがありますので控えたほうが無難な食品です。また、リステリアは私たちの身の回りに普通に存在する細菌ですから、手作りをうたった生ハムやチーズなどでは製造中の衛生管理が不十分であることが多いために汚染の危険性はより高いと考えられます。
また、生で食べるのは危険ですが、リステリアは熱に弱いので、加熱調理をすれば安心して食べることができます。

<妊産婦と子どもの両方が気をつけたい食品>
○昆布やヒジキ
ミネラルが豊富な海藻は妊娠中の女性や子どもにすすめられることの多い食材ですが、食べ過ぎには注意が必要です。昆布にはヨウ素がたくさん含まれているのですが、胎児や小さい子どもはヨウ素の過剰症を発症しやすいため、昆布や昆布ダシの入った料理があまり多くならないように配慮するとよいでしょう。ヒジキは発がん性が指摘されている無機ヒ素の多い食品ですので、使用する場合には水戻しのあと、何度もすすいでから調理をするとよいでしょう。もともとヒジキを好まないのであれば敢えて食べる必要はありません。離乳食からも外したほうが無難です。

<乳児が気をつけたい食品>
○はちみつ
はちみつには、まれにボツリヌス菌の芽胞が混入することがあるのですが、蜂が自然環境に咲く花から採取するものですから、混入を防ぐことは不可能です。「乳児ボツリヌス症」になる危険性があるため、1歳未満の子どもには与えないようにしましょう。
では、なぜ1歳未満だと「乳児ボツリヌス症」になるのでしょうか?
ボツリヌス菌は、主に土や水中などの身近な環境に存在している嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成します。どのくらい熱に強いかというと、120℃以上で4分間以上加熱しないと壊すことができないほど。つまり、家庭での加熱では殺菌できません。このボツリヌス菌の芽胞は、酸素が少ない環境になると増殖する特徴があるため、調理して時間がたった食品の中や保存食品の中で繁殖し「ボツリヌス毒素」という強力な毒を作って食中毒を起こします。これが「ボツリヌス食中毒」ですね。
健康な成人の場合、はちみつに含まれるボツリヌス菌の芽胞を摂っても体内で増殖することはないのですが、乳児特有の腸内環境ではボツリヌス菌が定着しやすいため、腸の中で増殖しボツリヌス毒素を作り出してしまいます。だから「乳児ボツリヌス症」になるというわけです。
はちみつの他にも黒糖やコーンシロップ、井戸水からもボツリヌス菌が検出された事例があるので要注意。また、畑の土の中に存在する菌ですので、土のついた野菜はしっかりと洗ってから調理するようにしましょう。泥が付着した野菜を使ったスープを食べて発症した事例もあります。

<子どもが気をつけたい食品>
○ジャガイモ
ジャガイモの芽だけでなく、緑色になった皮にもソラニンという毒が含まれているので気をつけてください。大人も食べないほうがいいのですが、特に子どもは大人に比べて中毒になりやすいのです。念のため、離乳食にジャガイモを使用するときは皮を厚く剥き、その後も小さいうちは皮ごと食べるような料理は避けたほうが無難でしょう。
なお、弱い光に当たるだけでもソラニンが作られますから、ジャガイモを保存するときは光を完全に防ぐようにしてください。

○ギンナン
子どもにはあまり食べさせたくない食品です。食べ過ぎると、ギンナン中毒だけでなく、ギンナンに含まれる「4-O-メチルピリドキシン」という成分がビタミンB6の働きを邪魔することでビタミンB6の欠乏症状を引き起こす危険性があります。ほとんどは10歳未満の子どもで、中にはたった5、6個程度でも中毒を起こした事例もありますから、小学生までの子どもにはあまり与えないほうがよさそうです。料理の中に1、2個入っている程度なら問題ないでしょう。

このほか、以前書いたのですが、生ものやお弁当などによる食中毒、誤嚥による窒息にも要注意です。連載第8回の「危険な食品ってあるの?」、第1回の「お弁当と食中毒」も読んでみてくださいね。

●食と栄養の疑問、大募集!
食や栄養について疑問に思っていること、知りたいことがありましたら、ぜひこちら(all@metamor.co.jp)までメールをお寄せください。全てに回答することはできませんが、可能な限り、この連載上でお答えしていきたいと思っています。
※個別にお答えすることはできません。

著者プロフィール

成田崇信

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で食と健康に関する啓蒙活動を行っている。同名義での共著書に『謎解き超科学』(彩図社)がある。

著書

親子の食事

お問い合わせ

お問い合わせフォーム

第9回 意外と知らない!? 食物アレルギーの基礎知識

Print

毎月第4木曜更新!

意外と知らない!? 食物アレルギーの基礎知識

  3月9日公開の『小児科医ママの子どものケア きほんのき』では、森戸やすみさんがアレルギーの仕組みと治療の全般的な話をされました。そのバトンを受けて、今回は「食物アレルギー」の話をしたいと思います。森戸さんの記事を先に読んでいただくとより理解していただきやすいので、まだの方はぜひそちらもお読みください。

 私たちの身体には、自分と異物を区別して、異物を追い出す仕組み(免疫)が備わっています。ところが、私たちが生きていくためには、異物である食物を口にしなくてはなりません。そのため、消化管から食べものを吸収するときには、異物と認識されない特別な仕組みが備わっているのです。これを「経口免疫寛容」といいます。つまり、食物アレルギーは、なんらかの理由でこの経口免疫寛容が上手く働かなくなってしまい、食べものが異物(アレルゲン)として認識されてしまうというものなのです。

この食物アレルギーの原因物質(アレルゲン)は、卵や牛乳、小麦、ピーナツ、エビやカニなどから、ゴマや果物、松茸や山芋などまでと幅広く様々なものがありますが、多くはタンパク質で、一般に加熱や分解をするとアレルギー症状が起こりにくくなることがわかっています。

 では、アレルギー症状とは、一体どういうものでしょうか。アレルギーの症状は、かゆみをともなう皮膚の湿疹、目や口や鼻などの粘膜の炎症、呼吸の困難、命にもかかわるようなアナフィラキシーショック(意識障害や血圧の低下)など様々で、アトピー性皮膚炎と合併して起こることが多く、その関連性もわかってきています。じつはアレルゲンと認識された食べものは、皮膚や粘膜などに付着しただけでもアレルギー反応が起こることがありますので注意が必要です。

 このように聞くと、アレルギーが怖くなってしまうかもしれません。そんなアレルギーの予防方法として「お母さんが妊娠中から授乳中まで卵などの代表的なアレルゲンを取らなければいい」、「2歳まで離乳食を与えず母乳だけで育てるといい」、「代表的なアレルゲンは与えるのを遅らせるといい」というような説をよく見かけますが、じつはこれらの説には根拠がなく、むしろお母さんやお子さんの栄養が不足する危険性があるので、やらないようにしましょう。

 現在、アレルギー対策として(もちろん絶対に防げるというものではありませんが)、できることは以下のふたつです。

① 皮膚を清潔に保ち、しっかり保湿する
まだ口から食べたことのない食べものが、先に乾燥した皮膚の隙間から侵入すると、免疫細胞が働いてアレルギー反応が起こることがあります。つまり、経口免疫寛容ができる前に、食物に対する抗体ができてしまい、それがアレルギーの発症原因の一つであると考えられているのです。特にアトピー性皮膚炎を発症していたり、たまたま皮膚が荒れていたり、皮膚の薄い赤ちゃんに付着するとリスクとなる可能性があります。
ですから、赤ちゃんの口もとはこまめに拭う、皮膚の清潔を保って保湿することは、アトピー性皮膚炎だけでなく、食物アレルギーを防ぐことにも繋がると考えられるのです。

② 早めから様々な食べものを与える
 最近の研究では、アレルギーを起こしやすい食品を小さい子どもに与えないことがかえって食物アレルギー発症の原因になっていることを示唆する結果が出ています。ですから、代表的なアレルゲンであっても、あまり心配しすぎないで、様々な食べものを早めから与えたほうがいいでしょう。ただし、初めての食品を与えるときは、アレルギー反応が起こる可能性を考慮して、小児科を受診しやすい昼間に、一口からにしてくださいね。

次に、実際に食物アレルギーと診断された場合、どのように治療するかを説明します。
 食物アレルギーの治療の基本は、必要最小限の原因食品のみの除去と定期的な食物負荷試験によるアレルギー耐性の確認です。食物アレルギーは食品にもよりますが、年齢とともに耐性がつくことが多いため、成長とともに安全に食べられるようになることがあります。血液検査によるデータだけでは食物アレルギーの判断が難しいため、安全に食べるためにはアレルギー専門医による負荷試験が必要です。
 耐性の獲得を進めるために、原因となる食品を決められた量を食べる経口免疫療法が行われることもありますが、まだ研究段階のようですから、必ず食物アレルギー専門医の指導の下で実施してくださいね。
また、命にも関わるアナフィラキシーショックを防ぐため、エピペン(アドレナリン自己注射薬)が処方されることがあります。

 それから、食物アレルギーについては、予防だけでなく診断や治療についても、誤った情報やデマが広まっています。食物アレルギーは血液検査だけでは判断できないのですが、食物負荷試験を行わずに診断されていることもあるようです。食物アレルギーの基本は、必要最小限の除去食で、なるべく多種類の食品を食べられるようにして成長を阻害しないことです。本当は食物アレルギーでない人が過剰診断されている可能性もあるようですから、必ず専門医に相談しましょう。

最後になりますが、本当に食物アレルギーがある場合には除去食が基本なのに、「自然栽培の○○だからアレルギーの子どもでも食べられる」というような、自然だから大丈夫という根拠のない宣伝をしている企業があり、問題になったことがあります。鶏卵でも食肉でも小麦粉でも、その他のどんな食品でも、飼育方法や栽培方法でアレルゲンがなくなったり、変質したりするような事実はあり得ません。最悪の場合、命にもかかわりますから、そういうものを子どもに与えたり、他の人にすすめたりは絶対にしないでくださいね。

●食と栄養の疑問、大募集!
食や栄養について疑問に思っていること、知りたいことがありましたら、ぜひこちら(all@metamor.co.jp)までメールをお寄せください。全てに回答することはできませんが、可能な限り、この連載上でお答えしていきたいと思っています。
※個別にお答えすることはできません。

著者プロフィール

成田崇信

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で食と健康に関する啓蒙活動を行っている。同名義での共著書に『謎解き超科学』(彩図社)がある。

著書

親子の食事

お問い合わせ

お問い合わせフォーム

第8回 「危険な食品」ってあるの?

Print

毎月第4木曜更新!

「危険な食品」ってあるの?

 「危険な食品」というと、どんな食べものが思い浮かぶでしょう。

 インターネット上では、さまざまなものが「危険な食品」とされているようですが、特に有名なのが食品添加物(合成甘味料や保存料)、マーガリン、砂糖、牛乳でしょう。「食品添加物やマーガリン(トランス脂肪酸)は万病のもとになる」、「砂糖を摂ると低血糖症など様々な病気になり、キレやすい性格になる」、「牛乳はホルモン漬けなので健康に悪いうえ、日本人には消化吸収ができない」などと噂されているようです。

 このような特定の食べものの危険性を強調する話は「有害論」といわれますが、特に子育て世代や健康に不安のある高齢者がターゲットになりやすく、あまり気にしすぎると、食生活の偏りや余計な出費を強いられるなどの問題が起こります。また、これをきっかけにおかしな健康法にはまってしまい、かえって健康を損なうケースもみられます。

 確かに、過去には有害な食品添加物が使用されていたこともありますし、マーガリンも砂糖も牛乳も摂りすぎれば肥満を招き、生活習慣病の原因になるでしょう。しかし、それはあくまで摂り過ぎの場合であり、少し食べただけで身体をおかしくするような毒物ではありません。そんなことを言ったら、水でさえ一度に大量に摂れば危険です。量を無視して危険をあおるような話は、ほぼデマだと考えてよいでしょう。そもそも、砂糖でキレやすくなるとか、牛乳がホルモン漬けだとか消化吸収できないなどは、完全なデマです。

 添加物や砂糖のように必要以上に有害視される食品がある一方で、本当に命に関わるような危険な食品があることは意外と知られていないのが実情です。

 特に危険性が高いのが生肉で、刺身で食べるのはもちろん、加熱不十分な肉を食べた場合でも、腸管出血性大腸菌やカンピロバクター、寄生虫などによる深刻な食中毒のリスクがあります。肉や生肉を触った箸を口にしただけでも食中毒になることがあるため、十分な注意が必要です。
 厚生労働省も生肉を食べないよう注意喚起していますが、これに対して「自己責任で食べているのだから干渉しないでほしい」という意見があります。確かに自分にしか被害が及ばないのであればそうですが、肉の生食で起こる食中毒には周囲の人に感染するものがあるため、自己責任ではすみません。特に子どもや高齢者など体力が十分でない人が感染すると、死に至ることもあるのです。生食が認められていない肉の刺身は絶対に食べないようにしましょう。
 なお、生食をしても問題が少ないのは馬肉と、衛生管理ができている調理場で表面を焼いて取り除いて刺身用に仕上げた牛肉など。でも、本当に衛生管理できているかどうかは不明なことが多く、基本的に生食にはリスクがあると考えてください。

 また、ジャガイモの芽や青い部分に含まれるソラニンによる食中毒にも要注意。学校で栽培したジャガイモが原因の食中毒がほぼ毎年起こっています。「危険な食品」というと、なんとなく人工のものをイメージしがちですが、実際には天然や自然の中にも毒を含むものはたくさんあるのです。
 最近は、鶏肉に付着しているカンピロバクターによる食中毒が増えており、ギランバレー症候群のような重篤な後遺症が起こることが知られておりますので、身近な食品が原因となる食中毒には十分気をつけてください。食中毒については、この連載の第1回<お弁当と食中毒>も参考にしてくださいね。

 次に気をつけたいのが、窒息しやすい食品です。毎年公表されている死亡統計を見ると食品が原因の窒息事故数は、ここ10年程やや増加傾向で年間4000人以上と多くの方が亡くなっています。
 高齢者の場合、特に危険なものとしては、お餅のような粘りの強いもの、こんにゃくやミニトマトのように噛みにくい食品が挙げられますが、パンやご飯などあまり危険だと思われていない食品による事故も多いことはもっと知られてほしいところです。
 高齢者の食事はある程度細かく切り分けて調理し、食事中には一口の量を少なくするよう声がけをしてくださいね。子どもの場合も同様ですが、少し違うのは、遊び食べや歩き食べをしていて、思いがけず食べものを飲み込んでしまい、喉につまらせてしまう事故も多いこと。ふざけながら食事をしてはいけないことを厳しく伝えてほしいと思います。

 こうしてみていくと、食材の確認や調理の仕方などに注意すれば、特別に危険な食品などないことがわかるでしょう。 むしろ、危険なのは「○○は危険」と特定の食品を遠ざけることです。たとえば、乳製品を危険だと思い込んでとらなければ、カルシウムが不足するかもしれません。カルシウムが不足しないよう小魚をたくさん食べるなど、他の特定の食品をとりすぎれば、今度は塩分などの他の成分の摂りすぎになるかもしれません。
 また、「自然のものでなければダメ」という態度も同様に私たちの食の選択肢を狭めてしまうため、生活の質を低下させかねないのです。

 というわけで、ありきたりな結論ですが、天然や人工にこだわらず、様々な食品をまんべんなく食べるようにしてくださいね。

●食と栄養の疑問、大募集!
食や栄養について疑問に思っていること、知りたいことがありましたら、ぜひこちら(all@metamor.co.jp)までメールをお寄せください。全てに回答することはできませんが、可能な限り、この連載上でお答えしていきたいと思っています。
※個別にお答えすることはできません。

著者プロフィール

成田崇信

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で食と健康に関する啓蒙活動を行っている。同名義での共著書に『謎解き超科学』(彩図社)がある。

著書

親子の食事

お問い合わせ

お問い合わせフォーム