第9回 意外と知らない!? 食物アレルギーの基礎知識

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意外と知らない!? 食物アレルギーの基礎知識

  3月9日公開の『小児科医ママの子どものケア きほんのき』では、森戸やすみさんがアレルギーの仕組みと治療の全般的な話をされました。そのバトンを受けて、今回は「食物アレルギー」の話をしたいと思います。森戸さんの記事を先に読んでいただくとより理解していただきやすいので、まだの方はぜひそちらもお読みください。

 私たちの身体には、自分と異物を区別して、異物を追い出す仕組み(免疫)が備わっています。ところが、私たちが生きていくためには、異物である食物を口にしなくてはなりません。そのため、消化管から食べものを吸収するときには、異物と認識されない特別な仕組みが備わっているのです。これを「経口免疫寛容」といいます。つまり、食物アレルギーは、なんらかの理由でこの経口免疫寛容が上手く働かなくなってしまい、食べものが異物(アレルゲン)として認識されてしまうというものなのです。

この食物アレルギーの原因物質(アレルゲン)は、卵や牛乳、小麦、ピーナツ、エビやカニなどから、ゴマや果物、松茸や山芋などまでと幅広く様々なものがありますが、多くはタンパク質で、一般に加熱や分解をするとアレルギー症状が起こりにくくなることがわかっています。

 では、アレルギー症状とは、一体どういうものでしょうか。アレルギーの症状は、かゆみをともなう皮膚の湿疹、目や口や鼻などの粘膜の炎症、呼吸の困難、命にもかかわるようなアナフィラキシーショック(意識障害や血圧の低下)など様々で、アトピー性皮膚炎と合併して起こることが多く、その関連性もわかってきています。じつはアレルゲンと認識された食べものは、皮膚や粘膜などに付着しただけでもアレルギー反応が起こることがありますので注意が必要です。

 このように聞くと、アレルギーが怖くなってしまうかもしれません。そんなアレルギーの予防方法として「お母さんが妊娠中から授乳中まで卵などの代表的なアレルゲンを取らなければいい」、「2歳まで離乳食を与えず母乳だけで育てるといい」、「代表的なアレルゲンは与えるのを遅らせるといい」というような説をよく見かけますが、じつはこれらの説には根拠がなく、むしろお母さんやお子さんの栄養が不足する危険性があるので、やらないようにしましょう。

 現在、アレルギー対策として(もちろん絶対に防げるというものではありませんが)、できることは以下のふたつです。

① 皮膚を清潔に保ち、しっかり保湿する
まだ口から食べたことのない食べものが、先に乾燥した皮膚の隙間から侵入すると、免疫細胞が働いてアレルギー反応が起こることがあります。つまり、経口免疫寛容ができる前に、食物に対する抗体ができてしまい、それがアレルギーの発症原因の一つであると考えられているのです。特にアトピー性皮膚炎を発症していたり、たまたま皮膚が荒れていたり、皮膚の薄い赤ちゃんに付着するとリスクとなる可能性があります。
ですから、赤ちゃんの口もとはこまめに拭う、皮膚の清潔を保って保湿することは、アトピー性皮膚炎だけでなく、食物アレルギーを防ぐことにも繋がると考えられるのです。

② 早めから様々な食べものを与える
 最近の研究では、アレルギーを起こしやすい食品を小さい子どもに与えないことがかえって食物アレルギー発症の原因になっていることを示唆する結果が出ています。ですから、代表的なアレルゲンであっても、あまり心配しすぎないで、様々な食べものを早めから与えたほうがいいでしょう。ただし、初めての食品を与えるときは、アレルギー反応が起こる可能性を考慮して、小児科を受診しやすい昼間に、一口からにしてくださいね。

次に、実際に食物アレルギーと診断された場合、どのように治療するかを説明します。
 食物アレルギーの治療の基本は、必要最小限の原因食品のみの除去と定期的な食物負荷試験によるアレルギー耐性の確認です。食物アレルギーは食品にもよりますが、年齢とともに耐性がつくことが多いため、成長とともに安全に食べられるようになることがあります。血液検査によるデータだけでは食物アレルギーの判断が難しいため、安全に食べるためにはアレルギー専門医による負荷試験が必要です。
 耐性の獲得を進めるために、原因となる食品を決められた量を食べる経口免疫療法が行われることもありますが、まだ研究段階のようですから、必ず食物アレルギー専門医の指導の下で実施してくださいね。
また、命にも関わるアナフィラキシーショックを防ぐため、エピペン(アドレナリン自己注射薬)が処方されることがあります。

 それから、食物アレルギーについては、予防だけでなく診断や治療についても、誤った情報やデマが広まっています。食物アレルギーは血液検査だけでは判断できないのですが、食物負荷試験を行わずに診断されていることもあるようです。食物アレルギーの基本は、必要最小限の除去食で、なるべく多種類の食品を食べられるようにして成長を阻害しないことです。本当は食物アレルギーでない人が過剰診断されている可能性もあるようですから、必ず専門医に相談しましょう。

最後になりますが、本当に食物アレルギーがある場合には除去食が基本なのに、「自然栽培の○○だからアレルギーの子どもでも食べられる」というような、自然だから大丈夫という根拠のない宣伝をしている企業があり、問題になったことがあります。鶏卵でも食肉でも小麦粉でも、その他のどんな食品でも、飼育方法や栽培方法でアレルゲンがなくなったり、変質したりするような事実はあり得ません。最悪の場合、命にもかかわりますから、そういうものを子どもに与えたり、他の人にすすめたりは絶対にしないでくださいね。

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著者プロフィール

成田崇信

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で食と健康に関する啓蒙活動を行っている。同名義での共著書に『謎解き超科学』(彩図社)がある。

著書

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第8回 「危険な食品」ってあるの?

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「危険な食品」ってあるの?

 「危険な食品」というと、どんな食べものが思い浮かぶでしょう。

 インターネット上では、さまざまなものが「危険な食品」とされているようですが、特に有名なのが食品添加物(合成甘味料や保存料)、マーガリン、砂糖、牛乳でしょう。「食品添加物やマーガリン(トランス脂肪酸)は万病のもとになる」、「砂糖を摂ると低血糖症など様々な病気になり、キレやすい性格になる」、「牛乳はホルモン漬けなので健康に悪いうえ、日本人には消化吸収ができない」などと噂されているようです。

 このような特定の食べものの危険性を強調する話は「有害論」といわれますが、特に子育て世代や健康に不安のある高齢者がターゲットになりやすく、あまり気にしすぎると、食生活の偏りや余計な出費を強いられるなどの問題が起こります。また、これをきっかけにおかしな健康法にはまってしまい、かえって健康を損なうケースもみられます。

 確かに、過去には有害な食品添加物が使用されていたこともありますし、マーガリンも砂糖も牛乳も摂りすぎれば肥満を招き、生活習慣病の原因になるでしょう。しかし、それはあくまで摂り過ぎの場合であり、少し食べただけで身体をおかしくするような毒物ではありません。そんなことを言ったら、水でさえ一度に大量に摂れば危険です。量を無視して危険をあおるような話は、ほぼデマだと考えてよいでしょう。そもそも、砂糖でキレやすくなるとか、牛乳がホルモン漬けだとか消化吸収できないなどは、完全なデマです。

 添加物や砂糖のように必要以上に有害視される食品がある一方で、本当に命に関わるような危険な食品があることは意外と知られていないのが実情です。

 特に危険性が高いのが生肉で、刺身で食べるのはもちろん、加熱不十分な肉を食べた場合でも、腸管出血性大腸菌やカンピロバクター、寄生虫などによる深刻な食中毒のリスクがあります。肉や生肉を触った箸を口にしただけでも食中毒になることがあるため、十分な注意が必要です。
 厚生労働省も生肉を食べないよう注意喚起していますが、これに対して「自己責任で食べているのだから干渉しないでほしい」という意見があります。確かに自分にしか被害が及ばないのであればそうですが、肉の生食で起こる食中毒には周囲の人に感染するものがあるため、自己責任ではすみません。特に子どもや高齢者など体力が十分でない人が感染すると、死に至ることもあるのです。生食が認められていない肉の刺身は絶対に食べないようにしましょう。
 なお、生食をしても問題が少ないのは馬肉と、衛生管理ができている調理場で表面を焼いて取り除いて刺身用に仕上げた牛肉など。でも、本当に衛生管理できているかどうかは不明なことが多く、基本的に生食にはリスクがあると考えてください。

 また、ジャガイモの芽や青い部分に含まれるソラニンによる食中毒にも要注意。学校で栽培したジャガイモが原因の食中毒がほぼ毎年起こっています。「危険な食品」というと、なんとなく人工のものをイメージしがちですが、実際には天然や自然の中にも毒を含むものはたくさんあるのです。
 最近は、鶏肉に付着しているカンピロバクターによる食中毒が増えており、ギランバレー症候群のような重篤な後遺症が起こることが知られておりますので、身近な食品が原因となる食中毒には十分気をつけてください。食中毒については、この連載の第1回<お弁当と食中毒>も参考にしてくださいね。

 次に気をつけたいのが、窒息しやすい食品です。毎年公表されている死亡統計を見ると食品が原因の窒息事故数は、ここ10年程やや増加傾向で年間4000人以上と多くの方が亡くなっています。
 高齢者の場合、特に危険なものとしては、お餅のような粘りの強いもの、こんにゃくやミニトマトのように噛みにくい食品が挙げられますが、パンやご飯などあまり危険だと思われていない食品による事故も多いことはもっと知られてほしいところです。
 高齢者の食事はある程度細かく切り分けて調理し、食事中には一口の量を少なくするよう声がけをしてくださいね。子どもの場合も同様ですが、少し違うのは、遊び食べや歩き食べをしていて、思いがけず食べものを飲み込んでしまい、喉につまらせてしまう事故も多いこと。ふざけながら食事をしてはいけないことを厳しく伝えてほしいと思います。

 こうしてみていくと、食材の確認や調理の仕方などに注意すれば、特別に危険な食品などないことがわかるでしょう。 むしろ、危険なのは「○○は危険」と特定の食品を遠ざけることです。たとえば、乳製品を危険だと思い込んでとらなければ、カルシウムが不足するかもしれません。カルシウムが不足しないよう小魚をたくさん食べるなど、他の特定の食品をとりすぎれば、今度は塩分などの他の成分の摂りすぎになるかもしれません。
 また、「自然のものでなければダメ」という態度も同様に私たちの食の選択肢を狭めてしまうため、生活の質を低下させかねないのです。

 というわけで、ありきたりな結論ですが、天然や人工にこだわらず、様々な食品をまんべんなく食べるようにしてくださいね。

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成田崇信

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で食と健康に関する啓蒙活動を行っている。同名義での共著書に『謎解き超科学』(彩図社)がある。

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第7回 サプリメントの適切な使い方(後編)

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サプリメントの適切な使い方(後編)

 前回の記事では、サプリメントはあくまで食品なので、医薬品のような効果や、美容や健康増進などの働きは期待できないこと、そう思わせるような誇大広告には気をつけましょうというお話をしました。では、サプリメントは私たちの生活に必要ないのでしょうか? 今回は、サプリメントの上手な使い方を考えてみようと思います。

 季節を問わず様々な食べものが十分に手に入る現代では、望ましい食習慣の形成のためにも、必要な栄養素はなるべく食事からとることが望ましいのは言うまでもありません。ただし、特別な事情がある場合、栄養素の確保が難しい場合にはサプリメントなどの栄養補助食品を利用したほうがよいこともあります。

【妊娠を希望しているとき・妊娠初期】

 妊娠初期にビタミンB群の一種である葉酸が不足すると、胎児に神経管閉鎖障害という重い先天障害が起きることがあるため、十分な摂取が必要とされています。先天障害を予防するためには1日に葉酸を0.4mg摂る必要があると考えられるのですが、国民健康・栄養調査などを見ると1日の摂取量は0.3mg程度であり、また食品に含まれる葉酸の利用効率は低いため、サプリメントを利用することが推奨されているのです。

 ただし、サプリメントから葉酸をとる場合には、注意点がいくつかあります。サプリメントなど、特定の成分が濃縮された食品の場合、摂り過ぎによる悪影響が心配されます。必要な葉酸は0.4mg程度ですので、1mgを超えないよう、栄養成分表示を確認しましょう。 
 次に葉酸のサプリメントが必要な時期には妊娠に気づかない場合が多く、気がついてから飲み始めても間に合いません。なので、妊娠を希望しはじめたときから摂ることが大切です。また、妊娠初期を過ぎても、葉酸は胎児の成長に必要なので緑黄色野菜を中心に野菜を多めに食べるとよいのですが、食欲が低下している場合にはサプリメントを使ってもよいと思います。

【明らかに特定の栄養素が欠乏しているとき】

 何らかの事情によって特定の栄養素の不足がわかっている場合、それをサプリメントで補うのは悪いことではありません。
 たとえば、乳製品や卵も含め動物性食品一切を食べない菜食主義の場合、ビタミンB12が不足しています。菜食主義でも食事のバランスに気をつけていれば、たいていの栄養素は確保できますが、人間が利用できるビタミンB12は動物性食品にしか含まれていないため不足してしまうのです。宗教上の理由で完全菜食をしている人が多い欧米などではよく知られているのですが、日本では十分認知されていないようなのでご注意ください。なお、病気で胃を切除した場合にはビタミンB12の吸収が極端に低下するため、薬としてビタミンB12が処方されます。

 次に、日光を十分に浴びられないときは、ビタミンDが不足しがちです。ビタミンDは日光を浴びることによって皮膚で合成されますが、冬の北日本のように日射量がとても少ない場合、十分な量を合成できないことがあります。そのほか日光湿疹の予防や美容のために肌の紫外線対策をしている場合にも不足することがあるでしょう。ビタミンDは魚などの動物性食品に比較的多く含まれていますが、アレルギーなどの理由で十分摂ることができない場合には、サプリメントの使用を考えてもいいと思います。

【病気や加齢などで十分な食事が困難なケース】

 健康な若い人の場合はサプリメントのような栄養補助食品が必要なケースは少ないですが、病気や加齢によって栄養素を十分に摂ることが難しい場合には、こうした食品を活用するのも悪いことではありません。
 病気でなくても、高齢になると食欲が低下して十分な食事ができないこともありますが、栄養素を濃縮した食品であれば、無理なく摂れるでしょう。歯の悪い高齢者では亜鉛が不足しやすい傾向がありますが、これは亜鉛の多い食品は貝類やナッツなど高齢者には食べにくいものが多いことと関係があると思います。亜鉛が不足すると味覚障害が起こることがあり、食欲低下の原因にもなるので、さらに栄養不足という悪いサイクルを招きかねません。サプリメントで補充することが本人の負担軽減になるのでしたら試してみてもいいのではないでしょうか。ただし、処方されている薬との相互作用も考えられますので、かかりつけの医師に相談をしてから始めるとよいでしょう。

 ただ、いずれの場合にしても、栄養学の知識が十分でないと、不足しているのかそうでないのかわからない場合も多いでしょう。不足しているかどうかわからないのにサプリメントを摂るのは、過剰症の心配もあるのでおすすめできません。

 ひと昔前に、ビタミンやミネラルなどの微量成分をたくさん摂ることで、がんなどの病気予防、健康増進の効果が得られるのではないかと盛んに研究が行われましたが、調査の結果は思わしくなく、一部のビタミンでは却ってがんのリスクを高めてしまうというデータがでてきたことから、今では下火になりつつあります。しかし、こうした情報は一般にはあまり伝わらず、健康によさそうなイメージがいまだに残っていることが、サプリメントが流行っている理由のひとつかもしれません。どんな栄養素も、たくさん摂れば摂るほどよいというわけではないことを覚えておいてくださいね。

 さて、サプリメントなどの栄養補助食品について、いろいろと検討をしてきましたが、意外と有効な場面は少ないということがわかっていただけたのではないでしょうか。特定の栄養素を手軽に多量に補給できるサプリメントは、誰にとってもよいものではありません。場合によっては、健康を害する危険性のあるものです。ですから、自分が摂るときに慎重に検討するのはもちろんのこと、気軽に人にすすめないようにしましょう。

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著者プロフィール

成田崇信

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で食と健康に関する啓蒙活動を行っている。同名義での共著書に『謎解き超科学』(彩図社)がある。

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