第8回 解熱剤は使っちゃダメ?

ママ

毎月第2木曜更新!

 たまに「子どもに解熱剤を使ってはいけない」という説を見かけることがあります。これは本当でしょうか? 

 まずは、熱が出る仕組みについて知っておきましょう。
 私たちの体は、ウイルスや細菌、真菌などの有害な異物が一定量以上入ってくると、血管内皮細胞・単球・マクロファージなどの細胞から伝達物質が出て、脳の体温調節中枢に非常事態を伝え、体温が上がる(発熱する)仕組みになっています。具体的には、寒気を感じさせる(衣服を着させる)、筋肉を震わせて体内での熱産生量を増やす、熱を奪う汗の分泌量を減らす、手先・足先の皮膚の血管を収縮させて熱の放散を減らすなどして、体温を上げるのです。

 こうして体温を上げるのには理由があって、体温が高いほうが異物を追い出すための免疫機能がうまく働き、風邪を起こすようなウイルスは高い温度に弱いため。つまり、発熱は体がウイルスや病原菌のような有害な異物と戦うための方法なので、むやみに下げてはいけません。目的は、熱を下げることではなく病気を治すことです。

 でも、解熱剤を使ってはいけないというのは極端な話。いくら体が有害な侵入者と戦っているとはいえ、高熱で眠れなかったり、熱だけでなく関節痛や筋肉痛があったりするのはつらいもの。あまりにも食べられない、飲めないという場合は、脱水も心配です。そんなときは解熱剤を使いましょう。解熱剤を使う目安としては38.5℃以上、または発熱だけでなく他のつらい症状があるときにしてください。たとえ39℃以上あっても、お子さんが元気だったら使う必要はありません。大人も同じですが、つらくなければ熱を下げなくていいのです。

 解熱剤は、脳の体温調節中枢に作用して皮膚の血管を拡張させ、熱の放散をしたり、疼痛閾値を上昇させて痛みを感じさせなくさせたりする薬です。剤形は、坐薬、粉薬、シロップ、錠剤と様々ですが、子どもの場合は一般名でいうアセトアミノフェン(商品名ではアンヒバ、アルピニー、カロナール、ナパなど)が処方されると思います。アセトアミノフェンは最も副反応が少ないからです。

 大人によく処方されるアセチルサリチル酸(アスピリン)、メフェナム酸(ポンタール)、ジクロフェナク(ボルタレン)、ロキソプロフェン(ロキソニン)といった解熱鎮痛剤はNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれ、上記のような解熱鎮痛効果に加えて、炎症を起こしている部位で痛み物質ができるのを邪魔したり、末梢での痛みの感受性を低下させたりする作用もあります。ところが、子どもの場合は腎障害や胃腸障害がより出やすく、ライ症候群、インフルエンザ脳症などの誘因になる恐れがあるので使えません。ただし、イブプロフェン(ブルフェン)はNSAIDsですが、比較的副反応が少ないので小児に使うことがあります。
 
 解熱剤は医療機関で必要であると診断されれば処方してもらえますが、薬剤師または登録販売者が対応する薬局で市販薬として買うこともできます。セルフメディケーション・データベースセンターが運営する「おくすり検索」というサイトで、薬効分類の項目に解熱鎮痛薬、成分名の項目にアセトアミノフェンと入力すると、たくさんの商品名が出てくるはずです。お子さんによって坐薬がいい、粉がいいということがありますね。剤形という項目も選択しましょう。残念ながらシロップや散粒・細粒はないのですが、坐薬と顆粒は子ども用の解熱鎮痛薬があります。よくわからない場合は、薬剤師さんに確認して購入してくださいね。

 解熱剤の使い方ですが、シロップだったらそのまま飲ませましょう。または粉の場合でも同じですが、何かに混ぜて飲ませてもかまいません。水、ジュース、ゼリー、ゼリー状になっているオブラート、アイスクリームなどの普段から好きなものに混ぜるといいでしょう。坐薬の場合は、オムツを替えるときのように子どもを仰向けに寝かせて、肛門に入れて4~5秒間押さえてから、両足を真っ直ぐ伸ばすと筋肉の動きによって奥に入っていきます。滑りがよくなるように表面を水で濡らしたり、ワセリンを塗ったりして入れる人もいるようです。錠剤が飲める子は、多めの水や麦茶などで飲ませましょう。

 たまに解熱剤を飲ませたのに平熱にならないと心配する保護者の方もいますが、39℃が38.5℃になっただけでも体のつらさは軽減するはずです。お子さんが少しでもラクになったら効いたと判断してくださいね。また効果は数時間で切れますから、再び発熱しても驚かないでください。4~6時間あけたら再投与してもかまいません。でも、1日2回くらいにしておきましょう。

 保管する場合は、直射日光の当たらない涼しい場所に置いてください。坐薬は、気温が高いと柔らかくなってしまいます。薬の効き目は変わりませんが、使いにくくなるので、冷蔵庫に入れておくのがおすすめです。保管できる期間は、子どもは成長して体重が増えることで薬の適正量が変わるし、使用期限もありますから半年から1年程度と思ってください。それを過ぎたら捨てましょう。

 最後に、生後3か月までの子どもの場合は、解熱剤で様子を見るのではなく、すぐ医療機関にかかってください。小さな子では症状が少ないので、発熱しかなくても重大な病気である可能性があります。それ以上の月齢の子では、食べられないばかりでなく水分が飲めずぐったりしているとき、一日中うとうとして横になっているとき、発熱が何日も続くときは小児科を受診しましょう。

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ふだん疑問に思っていること、知りたいことなどありましたら、ぜひこちら(all@metamor.co.jp)までメールをお寄せください。全てに回答することはできませんが、可能な限り、この連載上でお答えしていきたいと思っています。
※個別にお答えすることはできません。

著者プロフィール

森戸やすみ(もりと・やすみ)

1971年東京生まれ。
1996年私立大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、現在は市中病院の小児科に勤務。

著書

育児の不安

らくちん授乳

育児の不安
各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと
http://www.metamor.co.jp/maegakipage/kodomowomamoru/”>【はじめに】はコチラ

第7回 看病ってどうしたらいいの?

ママ

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 あるお母さんと話していたら、「子どもができてから、改めていろいろ考えました。看病って何をしたらいいのかって。何をしたらいいんですか?」と聞かれました。考えてみると、これが看病ですよって習う機会はないですね。いろいろな正解があるとは思いますが、患者さんが求めるものを速やかにあげて、よく休んでもらうことが看病だと私は思います。

 まずは環境を整えましょう。病気の人は横になって休むのが楽でいいですが、清潔で柔らかい寝具があるといいですね。足音や話し声といった生活音まで控えなくてもいいと思いますが、騒音がするとか、振動が伝わるというのはよくないですね。健康な人でさえ、そんな環境ではゆっくり眠れません。

 それから寒い、暑いのはどちらもつらいものです。ちょうどいい室温と湿度が保たれていたら居心地がいいでしょう。特に決まった数値はありませんが、冬季なら室温20~22度で湿度40~50%、夏季なら25~27度で50~60%くらいを、おおよその目安にするといいかもしれません。熱があって暑がる場合や寒気がして手足が冷たいようなときはお子さんの様子に合わせて調節してくださいね。

 服装は、パジャマでも部屋着でも楽なものを着せましょう。熱があるとたくさん着せなきゃと思う人がいますが、それは間違いです。寒気があるならもちろん着せてあげてほしいのですが、高熱のときに厚着させると熱がこもってよけいに苦しくなりますから、様子を見て調整してください。体温が上がるのはウイルスや細菌といった侵入者と戦うため。病気が治ったら体が熱を下げていいと判断し、汗が出て熱が下がるのであって、汗をかいたら病気が治るわけではありません。特に自分で衣服の調節ができず、「暑い」などと言えないほど小さな子の場合は気をつけましょう。

 熱とともに頭痛がしたり、関節や筋肉が痛くなったりすることがあります。そういった際には、薄着にして解熱剤や氷枕のようなものや使うのもいいでしょう。額に貼るシートは、お子さんが気持ちよさそうなら使ってあげてください。嫌がるなら必要ありません。特に、1歳未満の子は自分で取ろうとして鼻と口をふさいでしまう事故が起きているため注意が必要です。

 食事は摂れるなら、なんでもあげましょう。お子さんが小さかったら母乳や粉ミルクですね。咳や鼻水、発熱などの症状が出る上気道感染(いわゆる風邪)の場合、食事制限をする必要はありません。調子が悪いときはバランスよく食べられなくても仕方がないので、食べられるものをあげましょう。

 お腹の風邪、つまり胃腸炎だったらどうでしょうか? もしもお子さんが吐いたり下痢をしたりして、食べてもすぐに出してしまうという状況なら、水分を与える程度がいいかもしれません。でも、激しく吐くのは一般に1日くらいのこと。もしも本人が食べたそうにしたり、「食べたい」と言ったりした場合は、あげてみましょう。固形のもののほうが、液体よりも吐かない場合もあります。私が研修医の頃は、胃腸炎の際に絶食にしてお腹を休めるということをまだ大学病院でもしていました。2000年に Journal of Pediatric Gastroenerology and Nutrition 30(5)に載った急性胃腸炎の治療の柱によると、それは間違った方法です。
急性胃腸炎によい治療の9つの柱は以下のとおり。

(1)脱水の水分補正には経口補液剤(Oral Rehydration Solution)を用いる
(2)使用ORSは低張液とする(ナトリウム60mEq/l、ブドウ糖74-111mmol/l)
(3)ORSによる脱水補正は急速(3—4時間)に行う
(4)食事の再開は早く行い、固形食を含む正常食とする
(5)治療乳は不要
(6)希釈乳は不要
(7)母乳栄養児では母乳を続ける
(8)治療中の水分喪失はORSで補正する
(9)不必要な薬物は使用しない

 ORSは病院で処方してもらうこともできますが、薬局や大きめのスーパーでOS-1という名前で市販されています。通常のスポーツ飲料は糖分が多すぎて、ミネラルが少ないのでOS-1あるいは、赤ちゃん用のイオン飲料が適しています。この9つに即して看病していても、お子さんがぐったりしていてつらそうだったら、医療機関に行きましょう。脱水になっていたら点滴をすることがあります。

 お風呂は、ぐったりしてつらそうだったら入れないでおきましょう。逆に高熱があっても元気なら、お風呂に入れても大丈夫。特にお腹を痛がったり、下痢をしたりしているときには、お腹を温めると楽になることが多いので可能なら入浴させてあげてください。小さい子は下痢が続くとオムツかぶれがひどくなりますから、拭くのではなく温かいシャワーで流すのもいいですね。

 前回の記事でも書きましたが、お子さんの調子が悪いとき、必ずしも早く医療機関に連れて行かなくてはいけないわけではありません。解熱剤も風邪薬も症状を和らげるだけのものなので、早く飲んだから早く治るというものでもありません。お子さんにとっては、できれば居心地のいい家で保護者の方が優しく接してくれるのが一番です。
でも、いつもと様子が違うとき、風邪ではない重大な病気でないかどうかを診てもらいたいとき、家での看病だけではお子さんがつらそうなときには医療機関を受診してくださいね。

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※個別にお答えすることはできません。

著者プロフィール

森戸やすみ(もりと・やすみ)

1971年東京生まれ。
1996年私立大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、現在は市中病院の小児科に勤務。

著書

育児の不安

らくちん授乳

育児の不安
各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと
http://www.metamor.co.jp/maegakipage/kodomowomamoru/”>【はじめに】はコチラ

第6回 病院に行くべきときは?

ママ

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 師走ですね。この時期になると、風邪をひく子が増えてきます。今日は、お子さんがどういうときは家で様子を見ていても大丈夫、どうなったら受診するかという話です。年末の帰省先や旅行先での場合についてもふれますから、ぜひ参考にしてくださいね。

 まず、たとえば咳や鼻水はあるけれどひどくない、便が緩いけれどお腹は痛くないなどのように本人もつらそうでなければ、必ずしも受診しなくてかまいません。のどや鼻の風邪にせよ、おなかの風邪にせよ、ウイルスによる感染症であることがほとんど。こういったときに出される薬は、対症療法の薬です。症状を和らげることが目的で根本的な治療ではないので、薬をもらっても早く治るわけではありません。風邪のときは、何よりもゆっくり休むことが大切です。 

ただし、以下のような場合は早めに小児科を受診しましょう。

【1】生後6か月までの赤ちゃんが発熱しているとき
発熱というのは、小児では37.5℃以上のこと。もちろん、ただの風邪ということもありますが、小さければ小さいほど症状が少ないので、髄膜炎や肺炎を起こしていることがあるのです。ただし、入浴や授乳の直後、激しく泣いているときなどに測った場合は、発熱ではない可能性があります。本当に熱があるなら、薄着にしても時間をおいても下がりませんから、薄着にして涼しいところで様子をみてから計り直しましょう。下がったら、急いで医療機関に行く必要はありません。

【2】生後6か月までの赤ちゃんの哺乳量が普段の半分以下のとき
母乳またはミルクをしっかり飲めている場合、新生児(生後1か月まで)だったら、1日に10回以上おしっこが出ます。それが6~7回だったり、それ以下だったりしたら十分に飲めていません。月齢が大きくなると1日の排尿回数は減って行きますが、いつもの回数の半分以下だったらやはり心配です。生後6か月までは、たとえ離乳食を始めていても少量で、母乳やミルクからしか水分や栄養を摂れていません。つまり、哺乳量が減ると脱水や低血糖になる心配があるのです。

【3】お子さん自身がつらそうで、いつもと様子が違うとき
生後6か月以上のお子さんの場合は、お子さん自身がつらそうなとき、つらそうなのに原因がわからないとき、ご両親が「いつもと様子が違う」と心配に思ったときなどに医療機関に行きましょう。いつもそばにいて見ている保護者の勘はけっこうあてになるんです。 
特に平日の日中なら、念のため受診してもいいですね。なぜなら夜間や休日になって急に心配になる人は多いからです。また、救急外来を受診するとしても、時間外にやっているところ自体が少ないうえに混んでいる場合も多く、待っている間に感染症がうつってしまったり、よけいに具合が悪くなったりしてしまうこともあるからです。

 夜間や休日に受診を迷う場合は、お子さんが眠れないくらいつらいかどうかを指標にするのもいいかもしれません。「一度吐いたけど、その後は眠れている」とか「咳をしながらも起きてこない」という場合は様子をみてもいいでしょう。「熱が高いのがつらそうなだけ」という場合は、家に解熱剤があれば直ちに医療機関に行く必要はありません。
 休日の日中や夜でも早めの時間に「解熱剤があればいいんだけど」「喘息で吸引さえできたらラクになりそう」などというときは、自治体のホームページで公表されている当番医(順番で休日や夜間に診療をしているクリニック)に行くといいでしょう。
当番医がやっていない時間帯で「何度も吐き続けている」とか「ゼイゼイして座っているほうがラクで横になって眠れない」などというとき、または重い症状があるときは、時間外窓口や救急外来、夜間診療のある病院にかかりましょう。近くに大きな病院の救急外来がある場合や救急指定病院がある場合は、直接電話してみてください。長く痙攣している、意識がないなどの場合は、救急車を呼びましょう。
受診するかどうか、救急車を呼ぶかどうかなどで迷った場合は、多くの自治体で設けている救急相談ダイヤル(東京都なら#7119)、また全国統一の小児救急でんわ相談(#8000)に電話してみてください。
こういうときのために、日頃からお住いの市区町村の広報紙やホームページで、夜間や休日にやっている医療機関を調べておくことも大切です。また、夜間や休日は人員の配置が少ないので、できる検査も出せる薬も少ないということは知っておいてくださいね。
(こちらも参考に→朝日新聞アピタル『小児科医ママの大丈夫!子育て』子どものケガ病気、なんでも小児科?)。

最後に、年末年始の旅行先や帰省先ではどうするのがいいでしょうか。
まず、自宅の市区町村から離れると乳幼児医療券はたいてい使えませんから、保険証と母子手帳、お薬手帳を持って行くことをお忘れなく。小さい子は出生時のエピソードが大事なことがありますし、母子手帳があればワクチン歴も確かめられます。お薬手帳があれば、治療経過の一部がわかり、薬の重複を防ぐことができます。それと常用している薬がある場合は、必ず持っていきましょう。休みが長い場合は、かかりつけの医師に相談して少し多めに処方してもらってもいいでしょう。
旅行でホテルや旅館に滞在する場合、緊急時に連れて行ってくれる医療機関は決まっているはずです。何かあったらフロントの人に相談しましょう。旅行でコンドミニアムなどを借りる場合や帰省の場合は、事前に行き先の近くの小児科、夜間や休日にやっている病院を探しておくと安心です。帰省なら、ご実家の人たちがどこを受診しているかを聞いておくのもいいと思います。
なお、海外旅行の場合、日本の健康保険は使えませんから、大人はもちろん、お子さんも医療保険に入りましょう。何千万円もの治療費がかかってしまう場合もあるので、絶対に忘れないようにしてくださいね。

子どものケアについての疑問、大募集!
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※個別にお答えすることはできません。

著者プロフィール

森戸やすみ(もりと・やすみ)

1971年東京生まれ。
1996年私立大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、現在は市中病院の小児科に勤務。

著書

育児の不安

らくちん授乳

育児の不安
各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと
【はじめに】はコチラhttp://www.metamor.co.jp/maegakipage/kodomowomamoru/