第9回 アレルギーの仕組みと治療

ママ

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 アレルギーの仕組みと治療

 まず、アレルギーとはなんでしょうか?  
 私たちの体には、自分と異物とを区別して、異物を追い出す仕組みが備わっています。だから、体内にウイルスや細菌が入ると、熱が出て白血球などが寄ってきて、液性免疫である抗体を作ったり、細胞性免疫を利用したりして、悪者のウイルスや細菌をやっつけるというわけ。この「免疫」という仕組みが体を守っているんですね。
 ところが、免疫は本来そこまで危険ではないはずの特定の異物に反応してしまうことがあります。これがアレルギーです。たとえば、スギ花粉が体内に入ってきたときに、白血球系細胞のひとつであるマスト細胞(肥満細胞)の上についているIgEが異物として認識すると、ヒスタミンなどの化学物質が放出されます。ヒスタミンは毛細血管を拡張するので、目が充血したり、皮膚が赤くなったり盛り上がったり、鼻水や痰などの分泌物を出したり、皮膚の痒みを起こしたりするのです。アレルギーの原因物質である「アレルゲン」は、人によってぞれぞれ違います。

 ひとくちにアレルギーといっても様々なものがありますが、子どもにとって特に身近なのはアトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症、食物アレルギーでしょう。すべて持っている人もいますね。もともとアレルギーの素因のある場合、年齢によって症状が違う形で出てくることがあり、「アレルギーマーチ」と呼ばれています。食物アレルギーに関しては、3月23日公開の『管理栄養士パパのみんなの食と健康の話』で詳しい解説をしてもらうので、その他のものについて解説します。

●アトピー性皮膚炎

 頭や顔、首、体、手足などに赤くて痒い湿疹が左右対称にでき、何度も消えたりできたりを繰り返す疾患です。粉が吹いたり、かさぶたができたりすることもあるでしょう。
 軽いアトピー性皮膚炎は、清潔と保湿だけでかなりよくなります。お風呂ではスポンジやタオルは使わず、石けんをよく泡立て、爪を立てないよう指の腹で全身を洗いましょう。そして石けんが残らないようよく流し、お風呂上がりには保護剤や保湿剤を塗ります。保護剤として薬局で売っているワセリンを塗っても、保湿剤として医療機関で処方されるヘパリン類似物質(商品名ヒルドイド)を塗ってもOK。どちらも朝晩2回は塗ってください。

 以上のようなケアをしてもよくならず、アトピー性皮膚炎かもしれないと思ったら、症状が軽い場合は小児科か皮膚科、重い場合はアレルギーを専門とする小児科か皮膚科を受診しましょう。家族にアレルギーがあるか、IgEが高いかという素因があって、症状が乳幼児では2か月以上、幼児以降だと6か月以上続く場合に診断されます。

 アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が壊れているため、外から入って来たものが刺激を与えることで炎症がひどくなります。この炎症が起こったときに、痒みや赤みを起こすのがヒスタミンなどの炎症物質です。医療機関では軽い場合は、肌を傷めない洗い方の説明、保湿剤の塗り方を指導され、ステロイドを必要に応じて使います。重い場合はそれに加えて免疫抑制剤の軟膏を治療で使います。1999年から使われ始めたタクロリムス(商品名プロトピック)は免疫抑制剤で、上手に使うとステロイドの量を減らすことができとても有効です。治療に熟練した皮膚科医あるいはアレルギーを専門とする小児科医が使います。

●気管支喘息

 喉がゼイゼイしたり咳が続いたりする発作が起きて、呼吸困難に陥る疾患です。気道の炎症が基礎にあり、呼吸器感染や運動、ハウスダストの吸入などによって、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質が放出されることで、気管支が細くなったり分泌物が出たりするために起こります。
 風邪をきっかけに気管支喘息発作が起こることもあり、風邪との区別は難しいですが、どちらにしてもお子さんがつらそうにしていたら小児科に行きましょう。

 小児科では、まず呼吸機能や気道過敏性を検査したり、鼻水や痰、呼気から気道炎症を示す物質を調べたり、血中のIgEを調べたり、アレルギーの病気を持った家族歴を聞いたりすることで診断をします。
 治療は、軽いゼイゼイ程度の小発作の場合はβ2刺激剤やステロイドなどを吸入します。歩くのも苦しいくらいの中発作の場合は、基本的に入院して酸素がどのくらい足りているかを調べながら、β2刺激剤やステロイドの吸入をし、点滴や内服でのステロイド投与を行うことが多いでしょう。眠ることもできないくらいの大発作の場合は、入院して酸素吸入や点滴でのステロイド投与、イソプロテレノールの持続吸入などを行います。発作を起こさないようにするための長期的な治療もありますので、ぜひ医療機関で相談してくださいね。

●花粉症

 花粉が粘膜に付着することで免疫が過剰反応して起こるのが花粉症です。スギ以外にもヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカバなどの約60種類の花粉が原因になります。三大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり。他にも目や喉が痒かったり、皮膚を痒がる人もいますし、熱っぽさやだるさを感じたりする人もいるでしょう。

 あまりひどい場合は、小児科か耳鼻科を受診しましょう。目だけの症状なら眼科でもいいと思います。医療機関で抗アレルギーの飲み薬、併用として抗アレルギーやステロイドの点眼・点鼻薬を処方してもらうと、症状が軽くなります。飲み薬はシロップ、粉、錠剤、水なしで飲めるOD錠など多種多様なものが各社から出ているので、希望がある場合は処方前に伝えましょう。

 なお、目を洗うことはあまり効果がなく、かえって目を傷つけたり、目を守る涙を取り去ってしまうことになったりするのでよくありません。鼻を洗うのは有効です。水道水でなく、生理食塩水や市販の器具を使うといいでしょう。

 最後に、アレルギーの関しては様々なデマが広まっています。たとえば「自然食で免疫力を高めたらアレルギーは治る」という説をよく見聞きします。でも、前述した通り、免疫は異物を攻撃するので、免疫力が高まったらアレルギー症状はひどくなるはずです。そんなことを言う人は、医学的な知識がまったくありません。

 また、「ステロイドは怖い」という説があります。確かに昔、ステロイドはとてもよく効くので多用され、副作用が出たことが報道されました。でも、1950年代から使われている薬で、現在は安全な使い方がわかっています。むやみに避けると、アトピー性皮膚炎でも気管支喘息でも命にかかわるケースがあります。気管支喘息は、吸入ステロイドのおかげで死亡者数が激減しました。だから、正しく知って、正しく使いましょう。不安や疑問があれば、主治医に質問してみてくださいね。

 アレルギーに悩む人が多いからこそ、変な治療法を考案して商売にする人たちがいます。あやしいものを目新しい情報、人目をひく治療法、オシャレで自然派なものに見せかけて広めている場合も多いので気をつけてくださいね。

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著者プロフィール

森戸やすみ(もりと・やすみ)

1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、現在は市中病院の小児科に勤務。

著書

育児の不安

らくちん授乳

育児の不安
各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと
http://www.metamor.co.jp/maegakipage/kodomowomamoru/”>【はじめに】はコチラ